貿易事業

第4次産業革命の進展により、世界で取引されるデータの量は飛躍的に拡大し、その処理スピードも格段に上昇している。インターネットや携帯電話の普及は、今や新興国を含め世界の隅々まで広がっており、デジタル市場は急速に拡大している。サイバー空間は、経済のみならず、政治、安全保障など世界の人々のあらゆる側面で不可欠な領域として認識されるようになった。
世界貿易の発展は3段階に分類できる1。第1段階は伝統的な貿易の拡大であり、輸送コストの低減によって、生産された物品が国境を越えて消費地に届けられるようになった。この段階で取引される物品は主に最終製品が対象であるが、消費者は、新しい商品やより価格の安い商品を容易に手にすることができるようになった。
第2段階はGVC(グローバル・バリューチェーン)貿易であり、さらなる輸送コストの削減と各種調整コストの低減によって、企業は国境を越えて商品の生産プロセスを細分化し、それぞれの生産工程を優位性の高い地域で行えるようになった。中間財の貿易が増大し、新興国をはじめ、世界の様々な地域に広がるGVCが形成されていった。
そして第3段階がデジタル貿易であり、データや情報の移転によるアイディアの共有のコストが飛躍的に削減されたことにより実現されている。デジタル貿易の拡大によって、世界の連結性(コネクティビティ)は格段に向上し、新たなビジネスモデルの創出や生産性の向上に貢献している。
デジタル貿易の定義については、世界的に統一されたものは存在しないが、例えばOECDは、デジタル貿易とは、基本的には国境をまたぐデータの移転を前提としたものであり、消費者、企業、政府が関わる、電子的または物理的に配送される物品やサービスの貿易にかかる電子的取引を包含するものであるとの概念を紹介している2。これに従うと、デジタル貿易は、インターネットを通じた物品の売買に加え、オンラインでのホテル予約、ライド・シェアリングや、音楽配信サービスなどオンラインプラットフォームを介して提供されるサービスなどを含む。なお、OECDはデジタル貿易の取引例を第Ⅱ-1-1-1表のように分類している3。一方で、例えば米国国際貿易委員会(USITC)は、デジタル貿易を、「製品やサービスの注文、生産、配送において、インターネットやインターネットをベースとした技術が特に重要な役割を担う貿易」と定義4しており、その範囲はより広いように見受けられる。デジタル貿易には、製品やサービスなどの電子的手段による越境取引のみならず、デジタル化社会を実現するためのデジタル関連製品・サービスの貿易、デジタル関連の知的財産の保護、電気通信インフラへの投資、企業の国外での投資・サービス提供や製品輸出に係るデータの取扱いなど含む広範な論点が関係しており、各通商協定や国際枠組みにおいてデジタル貿易ルールを検討する際は、こうした広範な論点について議論がなされるべきである。